群青 · AI時代のビジネス洞察

Zomato×Blinkit(Eternal):インドのフードデリバリー+クイックコマース「メニュー検索から10分配送へ」

創業:Deepinder Goyal(1983年インド生まれ、IIT Delhi卒、元ベイン・アンド・カンパニー・コンサルタント)、Pankaj Chaddah(共同創業者、IIT Delhi同窓、2021年頃退社);Blinkit子会社はAlbinder DhindsaとSaurabh Kumarが2013年12月に創業 · Eternal Limited (旧 Zomato Limited, NSE/BSE コード ETERNAL)

JOURNEY

主要項目

FIELD STAMPS
業界ローカル生活
地域グローバル(印度)
規模巨大企業
チャネルその他

創業のきっかけ

2008年7月10日、Deepinder GoyalとPankaj Chaddahがベイン・アンド・カンパニー勤務中、同僚が紙のレストランメニューを繰り返し求めるという課題を解決するため、レストラン検索サイト「FoodieBay」を立ち上げた。2009年11月に退職して専念し、2010年1月に「DC Foodiebay Online Services」として法人化。11月にはeBayとの名称衝突を避け、食品以外の事業にも対応できるよう「Zomato」へ改称した。2015年3月、Zomatoはインドでフードデリバリーを開始。当初はDelhiveryやRunnrなどのサードパーティ物流と提携し、2017年のRunnr買収後に自社配送網を構築した。一方、Albinder DhindsaとSaurabh Kumarが2013年12月に「Grofers」を創業し、翌日配送の食料品から開始。2021年8月に10分配送を導入し、12月に「Blinkit」へ改称した。「情報」から「フルフィルメント」へ向かう道と、「遅い」から「速い」へ向かう道が2022年に合流。Zomatoが5.68億ドルの全株式交換でBlinkitを買収し、合併後の会社は2024年に「Eternal Limited」へ改称された。

成長のマイルストーン

2008年
FoodieBay 立ち上げ 成長
7月10日、GoyalとChaddahがベイン勤務中にオフィスで収集していたレストランメニューを電子化し、FoodieBayを公開。「どこで何を食べるか」という同僚の悩みを解決した。デリー/NCR地域で開始し、後のZomatoの原型となった。当初は副業としてスタート。
2010年
退職とZomatoへの改称 転換
2009年11月に退職。2010年1月に法人化し、11月にZomatoへ改称。食品以外の事業展開を見据えた戦略的判断。同月にモバイルアプリをリリース。デリー、ムンバイ、バンガロールなど主要都市へ拡大。
2015年
フードデリバリー開始 転換
3月にインドでデリバリー事業を開始。当初は外部物流と提携。同月、米国のレストラン検索サイトUrbanspoonを買収し、米国・オーストラリア市場へ進出。YelpやFoursquareと競合。年間で20カ国以上に展開し、情報プラットフォームから重資産のフルフィルメント企業へ変貌。
2015年
過度な海外展開 失敗
20カ国以上の海外事業がほぼ赤字に。現地競合に勝てず収益化も困難だった。2017年2月に有料会員サービス「Zomato Gold」を開始。2019年にUAE事業をTalabatへ売却。2021年11月、インドとUAE以外の全市場からの撤退を発表。この時期の過度な拡大は初期の最大の失敗。
2020年
Uber Eats インド事業の買収 転換点
1月に全株式交換でUber Eatsのインド事業を買収。UberがZomatoの9.99%の株式を取得。Uber Eatsのシェアは5%未満だったが、これによりZomatoのシェアは約52%に達し、インド市場のリーダーとなった。「挑戦者」から「プラットフォームの主」への決定的な転換点。コロナ禍ではZomato Marketで食料品や酒類の配送も試験的に実施。
2021年
Blinkitへの出資と10分配送 転換
6月にBlinkit(旧Grofers)の9.3%を1億ドルで取得。8月に10分配送を開始し、インドのクイックコマース業界を塗り替えた。12月にGrofersからBlinkitへ改称。年末までに約6.3億ドルを調達。10分配送は配送員の安全面で批判を浴びたが、CEOが否定。
2022年
Blinkitの全株式買収 成長
3月にBlinkitが1600人を削減。4月にZomatoが1.5億ドルの融資を行い、買収交渉を開始。6月24日に5.68億ドルの全株式交換による買収を発表し、8月10日に完了。現金流出を抑えつつ、フードデリバリーとクイックコマースの二本柱を確立。
2022年
試行錯誤と撤退 失敗
多くの新規事業が不発。2022年8月開始の都市間デリバリー「Legends」は2年後に終了。2023年10月開始の事業者向け物流「Xtreme」も需要不足で終了。2020年開始の酒類配送も採算性から2021年に撤退。2021〜2024年に10以上の海外子会社を清算。迅速な撤退判断が重要となった。
2024年
Eternal Limitedへの改称 転換
ZomatoからEternal Limitedへ社名変更。フードデリバリーだけでなく、Blinkit、Hyperpure、Districtを含む多事業展開を反映。単一事業の会社ではないという戦略的シグナルを市場に発信。
2025年
Blinkitがデリバリーを追い抜く 成長
2026年度第1四半期、Blinkitの純注文額が初めてZomatoのフードデリバリーを上回り、最大の事業セグメントに。インドの消費トレンドが「食事」から「あらゆるもの」へシフトしたことを証明。
2026年
CEO交代とBlinkitの黒字化 転換点
1月21日、GoyalがCEO辞任を発表。2月1日よりBlinkit創業者のDhindsaがグループCEOに就任。Blinkitが初の調整後EBITDA黒字を達成し、クイックコマースの収益化を証明。

転換点

  • 2015年3月:フードデリバリー開始。情報サイトから重資産のフルフィルメント企業へ。
  • 2020年1月:Uber Eatsインド事業買収。シェア52%で市場リーダーへ。
  • 2022年8月:Blinkit全株式買収。クイックコマースを統合し事業構造を再編。
  • 2024年:Eternalへの改称。多事業展開のプラットフォームへ。
  • 2025年第1四半期:Blinkitの注文額がフードデリバリーを逆転。
  • 2026年2月:GoyalからDhindsaへCEO交代。クイックコマース創業者がグループを統括。

失敗とつまずき

  • 2012-2015年の過度な海外展開。収益化できず、2021年までにインドとUAE以外から撤退。
  • 2015年の米国・豪州進出。Yelp等との競合に敗北。
  • 2020年のZomato Market(食料品・酒類)。採算性から2021年に酒類配送を終了。
  • 2022年のLegends(都市間配送)や2023年のXtreme(小口物流)の終了。
  • 2021年の10分配送開始時の配送員安全問題。
  • 2023年4月のBlinkit配送員による報酬体系への抗議とストライキ。

关键成功要素

  • 2008-2010年のメニューデジタル化による初期ユーザー獲得。
  • 2017年のRunnr買収とZomato Gold導入によるフルフィルメント強化と会員による現金流出抑制。
  • 2020年の全株式交換によるUber Eats買収で、現金を温存しつつシェアを獲得。
  • Blinkitの10分配送とダークストア網によるクイックコマースのユーザー体験確立。
  • 2022年のBlinkit買収による迅速な統合と文化融合。
  • 2024年の社名変更による多事業展開の明確化と経営陣交代の布石。

教訓

  • 収益化の道筋がない海外展開は失敗する。単一市場での深掘りが重要。
  • 情報プラットフォームからフルフィルメントへの転換は必須。さもなくば競合に追い抜かれる。
  • Uber Eatsの買収は、株式交換によるシェア獲得の教科書的な成功例。
  • クイックコマースは固定費が高いモデル。ダークストアの密度と店舗効率が鍵。
  • CEOの交代は必要。創業者が次のフェーズに適しているとは限らない。
  • 10年間の試行錯誤と撤退は失敗ではなく、必要なプロセス。サンクコストに縛られてはならない。

主要データ

  • 2026年度第3四半期調整後売上高:1669.2億ルピー(約18億ドル、前年同期比190%増)(会社発表値、2026年時点、未監査)
  • 2026年度第3四半期純利益:102億ルピー(約12億ドル、前年同期比73%増)(会社発表値、2026年時点、未監査)
  • Blinkit店舗数2026:1816店(2027年3月までに3000店を計画)(会社発表値、2026年時点、未監査)
  • Blinkit純売上高前年同期比成長率2025-11:137%(前月比27%)(会社発表値、2026年時点、未監査)
  • Blinkit 2026年度第3四半期調整後EBITDA:+4億ルピー(初の黒字化、前年同期は103億ルピーの赤字)(会社発表値、2026年時点、未監査)
  • Zomatoフードデリバリーシェア2025年度第1四半期:58%(Motilal Oswal調べ)(会社発表値、2026年時点、未監査)
  • 2027年度第1四半期グループ売上高:2021.1億ルピー(約24億ドル、前年同期比182%増)(会社発表値、2026年時点、未監査)
  • UberEats買収対価2020:全株式交換、UberがZomatoの9.99%を取得(会社発表値、2026年時点、未監査)
  • Blinkit買収対価2022:5.68億ドルの全株式交換(会社発表値、2026年時点、未監査)
  • Blinkit都市カバー率2025-03:153都市(会社発表値、2026年時点、未監査)

競合・同業

Eternal (Zomato×Blinkit) は、インドのフードデリバリー市場で長年のライバルであるSwiggyと対峙している。Motilal Oswalの2025年度第1四半期レポートによると、Zomatoのシェアは約58%、Swiggyは約38-40%で、両社で市場の95-98%を占める実質的な複占状態にある。2026年8月、Flipkartがバンガロールを皮切りにフードデリバリーに正式参入し、複占構造が崩れ、三つ巴の争いとなった。クイックコマース分野では、Blinkit、Zepto、Swiggy Instamartが三つ巴の争いを繰り広げている。Zeptoは2024年に50億ドルの評価額で10億ドルを調達し、店舗拡大とIPOを目指している。Swiggy InstamartはSwiggyの配送網を活用。3社とも2024-2026年にかけてダークストアの拡大と10-15分配送を標準化しているが、収益化に成功しているのはBlinkitのみ(2026年度第3四半期にEBITDA黒字化)。Eternalの強みは「デリバリー+クイックコマース+B2Bサプライチェーン(Hyperpure)+District(イベント)」の4事業の多角化にあるが、FlipkartがECと決済のトラフィックを武器に参入すれば、Zomatoのフードデリバリーの高収益が脅かされる可能性がある。