群青 · AI時代のビジネス洞察

飛書(Lark):ByteDanceが社内コラボレーションツールからグローバルな企業向けサービスへ進出

創業:張一鳴、謝欣 · 北京飛書科技有限公司(ByteDance傘下)

JOURNEY

主要項目

FIELD STAMPS
業界SaaS・業務ソフト
地域複数地域
規模巨大企業
チャネルその他

創業のきっかけ

飛書の物語は2016年末に始まった。社内コードネームは「Lark」で、当初はByteDanceの従業員がドキュメント管理、スケジュール調整、会議運営を行うための社内コラボレーションツールに過ぎなかった。ByteDanceが自社開発に踏み切った核心的な理由は、当時の市場にあるコラボレーションツールでは、急成長に伴う社内のコミュニケーションやナレッジマネジメントのニーズを満たせなかったためである。まずByteDance自身の数万人の従業員にサービスを提供し、社内での高頻度な利用を通じてプロダクトを磨き上げた後、外部の企業市場へと展開された。

成長のマイルストーン

2016年
起点 PMF
飛書は社内コードネーム「Lark」として始動。当初はByteDance従業員専用のコラボレーションツールであり、機能はドキュメント、スケジュール、会議管理に特化していた。この段階では外部への商業化は一切行われず、チームはByteDanceの効率化エンジニアリング部門に属していた。核心的な任務は、数万人の社内従業員のコラボレーション効率とナレッジ蓄積を確立し、実際の業務シナリオを通じて高頻度なニーズを検証することであった。
2019年
商業化 転換
2019年、飛書は外部の企業顧客向けに開放され、中国市場向けの「飛書」と海外市場向けの「Lark」という2つのブランドを立ち上げた。ByteDanceはTo B市場で二正面作戦を展開し、SlackやMicrosoft Teamsの市場参入経路を再現しようと試みたが、初期の顧客獲得は順調とは言えず、政府・企業向け市場の開拓は釘釘(DingTalk)や企業微信(WeCom)に比べて明らかに遅れをとった。
2021年
独立・昇格 転換点
飛書はByteDanceの6大独立事業ユニットの一つに昇格し、抖音(Douyin)やTikTokと同等の階層に位置づけられた。この組織改編は表面的には戦略的な重視を意味したが、実際には飛書に対してより大きな収益プレッシャーをもたらした。その後の報道によると、飛書は当時も継続的な投資フェーズにあり、商業化の規模は釘釘や企業微信のエコシステム規模と比べて顕著な差があり、政府・大企業顧客の開拓は停滞していた。
2025年
成長 成長
飛書の年間収益は一時約30億人民元に達し、先進製造、新エネルギー、小売チェーン、新消費などの業界をカバーした。チーム規模も数千人まで拡大したが、ByteDance内部で期待されていた爆発的な成長には届かなかった。同時に、ByteDanceの新たな戦略的重点として「豆包」大規模モデルが急速に台頭し、グループ内での飛書の資源優先順位は低下し始めた。
2026年
分割 転換
ByteDanceは社内メールを通じて、飛書のプロダクトチームと豆包のプロダクトチームを統合して新しい「豆包プロダクトチーム」を編成し、飛書のGTM(Go-To-Market)チームを火山引擎チームと合併させ、「創造力サービスプラットフォーム」という名称の新しいTo B組織を設立すると発表した。これは、10年間運営されてきた飛書ブランドが独立した事業ユニットとしては存在しなくなることを意味し、その企業コラボレーション機能や権限体系は豆包に組み込まれ、商業化能力は火山引擎に統合された。

転換点

  • 飛書は当初、ByteDanceの社内ツール(コードネーム:Lark)であり、数万人の従業員による高頻度な利用を通じてプロダクトが磨かれた。
  • 2019年の外部向け商業化時に「飛書」と「Lark」の2ブランドを同時展開したが、政府・企業市場の開拓は釘釘や企業微信に大きく遅れをとった。
  • 2021年11月、飛書はByteDanceの6大独立事業ユニットの一つに昇格し、戦略的地位が頂点に達した。
  • 2026年7月30日、飛書のプロダクトチームが豆包に、GTMチームが火山引擎に統合され、独立事業としての歴史に幕を閉じた。

失敗とつまずき

  • 飛書の政府・企業市場の開拓は期待に届かず、エコシステムの規模で釘釘や企業微信に追いつくことはできなかった。
  • 独立事業ユニットに昇格した後も社内ツールのDNAを払拭できず、外部の大企業顧客への販売転換効率が低迷した。
  • 独立ブランドとして10年間運営されたが、最終的にはグループの「All in AI」戦略のために分割され、SaaS路線は大規模モデルの入り口争いに道を譲ることとなった。

关键成功要素

  • まずByteDance内部の数万人の従業員にサービスを提供し、実際の業務シナリオでコラボレーションツールのPMFを検証した。
  • 「飛書」と「Lark」のダブルブランド戦略をとり、それぞれ国内および海外の企業向け市場を攻略した。
  • 2021年に6大独立事業ユニットへ昇格し、抖音やTikTokと同等の戦略的地位を確立した。
  • 2026年、AIの波の中で分割を余儀なくされ、プロダクト機能は豆包へ、商業能力は火山引擎へ統合された。

教訓

  • 社内ツールから外部向けSaaSへの転換は、プロダクトの完成度だけでは不十分であり、政府・企業向け販売とエコシステム構築こそが商業的成功の鍵である。
  • 大企業の戦略的重点は創業者の意志によって急速に変化するため、独立事業ユニットという身分が長期的なリソース保証を意味するわけではない。
  • AI大規模モデルがグループの最優先戦略となった場合、成熟したSaaSプロダクトであっても、入り口となるコンポーネントやエコシステムの補完機能へと格下げされる可能性がある。
  • コラボレーションツールの参入障壁(堀)は機能の数ではなく、ユーザーの人間関係のつながりとエコシステムへの依存度の深さにある。

主要データ

  • 年化収益:30億人民元(公開資料に基づく数値であり、独立した再検証は未実施)
  • 運営年数:10年(公開資料に基づく数値であり、独立した再検証は未実施)
  • 社内開始時期:2016年末(公開資料に基づく数値であり、独立した再検証は未実施)
  • 独立事業ユニット昇格時期:2021年11月(公開資料に基づく数値であり、独立した再検証は未実施)
  • 分割時期:2026年7月30日(公開資料に基づく数値であり、独立した再検証は未実施)

競合・同業

飛書の国内企業コラボレーション市場における主な競合は、釘釘と企業微信である。釘釘はAlibaba Cloudと中小企業エコシステムを背景とし、企業微信はWeChatのソーシャルグラフを活用して参入しており、両者とも政府・企業向けのカバー範囲とエコシステム規模で飛書を大きくリードしてきた。海外市場ではLarkがSlack、Microsoft Teams、Notionをベンチマークとしたが、ブランド認知度や有料企業顧客数において明確な突破口を開くことはできなかった。2026年のAIオフィス市場では、WorkBuddyや通義千問(Qwen)といった新たなプレイヤーがデスクトップ市場に参入し、飛書の既存領域をさらに圧迫している。