群青 · AI時代のビジネス洞察

東京精密:精密測定機器から始まり、ウェーハプローバでニッチ市場の二大巨頭へ

創業:東島耕造 · 株式会社東京精密(Tokyo Seimitsu Co., Ltd.、ブランド名:ACCRETECH)

JOURNEY

主要項目

FIELD STAMPS
業界産業機器・ロボット
地域日本
規模巨大企業
チャネルその他

創業のきっかけ

同社の前身は戦前の東京航空計器体系に遡り、1949年に株式会社東京精密工具として正式に再編されました。当初は切削工具、精密部品、ミシン用治具を製造していました。創業チームは「加工精度を保証するには、まず正確に測定できなければならない」という単純な真理に気づき、1951年から機械式測定機の自社生産を開始。1953年には日本初の空気マイクロメータを開発しました。他社に依存せざるを得なかった測定工程から参入し、精密計測を事業の柱に据えたことが、後の半導体製造装置への進出の布石となりました。

成長のマイルストーン

1949年
創業期 転換点
東京航空計器体系から株式会社東京精密工具として再編。東島耕造がチームを率い、切削工具と精密部品からスタート。戦後の日本で高精度な測定器具が不足していたことから、測定能力こそが精密製造の基盤であると認識し、単なる下請けではなく測定機の自社開発にリソースを投下。この選択がその後の70年の技術路線を決定づけました。
1953年
技術基盤の確立 PMF
1951年に機械式測定機の製造を開始し、1953年に日本初の空気マイクロメータを開発、続いて電気式測定機を投入。自動車や工作機械業界で販路を拡大し、工具メーカーから精密測定機器メーカーへと転換。ミクロン単位のセンシングとモーションコントロール技術が同社の強固な参入障壁となりました。
1958年
異分野への挑戦 転換
1958年に半導体製造装置分野へ参入し、ゲルマニウム結晶自動選別機を開発。当時、半導体は日本で黎明期にあり、同社は光リソグラフィのような花形分野を追わず、精密位置決め技術を活かせる結晶選別という地味な後工程に注力し、激しい資本競争を回避しました。
1963年
単一製品での飛躍 成長
1963年に日本初のウェーハダイシングソーを発売し、1964年にはTSKシリーズの前身となるウェーハプローバを投入。ウェーハの電気的テスト工程に食い込みました。プローバにはサブミクロン単位の位置決め精度と低振動、高い稼働率が求められ、同社が蓄積してきた精密機械技術と合致しました。この製品は後に世界中のウェーハ工場や封止・検査工場の標準装備となり、1963年から1964年にかけて大きな飛躍を遂げました。
1980年
周期的な苦境 失敗
半導体シリコンサイクルの変動により、装置の受注が激減し業績が大きく乱高下しました。同時に、コア技術から外れた多角化も不振に終わり、事業縮小を余儀なくされました。この教訓から、経営陣は半導体装置と精密測定機器の「二輪駆動」戦略を確立。測定機器の安定したキャッシュフローで装置事業の強い周期性を補う体制を整えました(1980年〜1990年)。
1986年
資本化 成長
1986年に東京証券取引所市場第一部に上場。その後、グローバル化を加速し、米国、ドイツ、韓国、台湾、中国に子会社や技術センターを設立。TSMC、サムスン、インテルなどのトップメーカーと深く連携し、ブランドを「ACCRETECH」に統一。共同成長と技術の融合を掲げました。
2026年
ニッチ市場の独占 成長
現在、ウェーハレベルテスト用プローバは東京精密と東京エレクトロンが世界市場を二分しています。韓国SEMICS、台湾MPI、中国長川科技などが残りのシェアを分け合っています。2026年3月期の決算では、計測機器部門だけで売上高約390億円、営業利益約53億円を計上。AIや車載チップ需要に対応するため、次世代半導体テストへの投資を加速させています。

転換点

  • 1964年、精密位置決め技術を、競争の激しい前工程ではなく、後工程のウェーハプローバというニッチ分野に投入したこと。
  • 1980年代の周期的な大赤字を経て、半導体装置と精密測定の二輪駆動体制を確立し、安定事業で周期変動をヘッジしたこと。
  • 1986年の上場後、ACCRETECHブランドでグローバル化し、世界トップクラスのウェーハメーカーと深く結びつき、顧客の参入障壁を築いたこと。

失敗とつまずき

  • 半導体不況時の受注激減と業績の乱高下により、単一の装置事業に依存する脆弱性が露呈したこと。
  • 初期のコア技術から逸脱した多角化が失敗し、最終的に二大事業への回帰を余儀なくされたこと。
  • リソグラフィなどの主流装置市場に参入できず、測定や後工程に限定されたため、東京エレクトロンのような総合メーカーに比べ規模が小さいこと。

关键成功要素

  • 他社が敬遠する測定工程からスタートし、計測精度で日本一を目指してから下流の装置へ展開したこと。
  • 資本集約的なリソグラフィ市場を避け、技術集約的だが競争が穏やかなプローバやダイシングソーという後工程に注力したこと。
  • 精密測定機器の安定したキャッシュフローで、半導体装置の周期的な変動を平滑化したこと。
  • TSMC、サムスン、インテルなどの主要顧客と深く連携し、装置を生産ラインに不可欠な資産へと変えたこと。

教訓

  • 隠れたチャンピオンの出発点は、他人が嫌がるが避けて通れない精度問題の解決にある。
  • 市場選びでは、人気分野の追随者になるよりも、不人気分野の独占者になるべきである。
  • 周期性の強い業界では、第二の安定した事業ラインでヘッジしなければ、一度の不況で淘汰される可能性がある。
  • 装置メーカーの参入障壁は、スペック表ではなく、顧客の生産ラインにおける検証と入れ替えコストに宿る。

主要データ

  • 計測機器部門売上高(2025年度):約390億円(会社公表値、2026年時点、独立した再検証は未実施)
  • 計測機器部門営業利益(2025年度):約53億円(会社公表値、2026年時点、独立した再検証は未実施)
  • 上場年:1986年 東京証券取引所市場第一部(公開資料ベース)
  • 技術蓄積年数:75年以上(1949年〜現在)(会社公表値、2026年時点、独立した再検証は未実施)
  • プローバの競争環境:東京エレクトロンとの二大巨頭が世界市場を主導(会社公表値、2026年時点、独立した再検証は未実施)
  • 証券コード:東証7729(会社公表値、2026年時点、独立した再検証は未実施)

競合・同業

ウェーハプローバ分野では、東京エレクトロン(TEL)が最大のライバルであり、両社で世界市場を長年主導しています。韓国SEMICSや台湾MPIが中高級市場でシェアを持ち、中国の長川科技や矽電などが国産化の波に乗って後工程から上流へ浸透しています。精密測定機器分野では、ミツトヨ(Mitutoyo)やカールツァイス(Zeiss)の三次元測定機や形状測定製品と正面から競合しています。前工程の多品目をカバーする東京エレクトロンに対し、東京精密は戦線を絞り込み、プローバやダイシング・薄化工程で精度と安定性の優位性を維持する戦略をとっています。