群青 · AI時代のビジネス洞察

マース(Mars Incorporated)——1911年の家族経営の菓子工房から、ペットフードとスナック菓子の非上場巨大企業へ。民営化とブランド買収による拡大戦略

創業:フランク・C・マース(Frank C. Mars)、フォレスト・E・マース(Forrest E. Mars Sr.) · マース(Mars Incorporated)

JOURNEY

主要項目

FIELD STAMPS
業界食品・飲料
地域複数地域
規模巨大企業
チャネルその他

創業のきっかけ

1911年、フランク・マースが米国ワシントン州タコマの自宅でバタークリームキャンディを手作りしたのが始まりだが、当初は製品が売れず、1920年に会社は倒産した。フランクは諦めず、借入金で再起を図り、1923年に「Milky Way」チョコレートバーを発売して市場での突破口を開いた。1928年にはシカゴに工場を建設し、段階的に菓子生産の規模を拡大した。息子のフォレスト・マースは経営理念の対立から1932年に家業を追われ、単身欧州へ渡り、英国やオランダなどで工場を設立。父子は1967年に両社を合併させ、世界的な菓子帝国を築き上げた。

成長のマイルストーン

1911年
創業と失敗 失敗
1911年、フランク・マースがワシントン州タコマで創業し、手作りのバタークリームキャンディやチョコレートを製造したが、市場の反応は薄く、売上が運営を支えられず1920年に倒産。フランクは清算を余儀なくされたが、諦めずに再挑戦した。この経験から工業生産とブランドマーケティングの重要性を学び、後のMilky Way発売の礎となった。この段階は1911年から1920年まで続いた。
1923年
ブランドの爆発的成長 転換点
1923年、フランクがMilky Wayを発売。濃厚なキャラメルとチョコレートの風味が人気を博し、米国で最も売れる菓子の一つとなった。1928年にシカゴで近代的な工場を建設し、1930年に「スニッカーズ(Snickers)」、1941年に「M&M's」を発売。特にM&M'sは第二次世界大戦中に米軍の軍用食として採用されたことで知名度が急上昇し、マースは地域的な菓子メーカーから全国的なブランドへと飛躍した。この間の年間売上高は数万ドルから数百万ドル規模へと成長した。この段階は1923年から1941年まで続いた。
1967年
家族企業の合併と多角化 転換点
1967年、フランクと息子のフォレストが合併合意に達し、米国事業と欧州の海外事業を統合して正式にマース社を設立。父子による分断状態を解消した。1968年には米国最大のペットフードメーカーであるKal Kanを買収し、1965年に設立していたウォルサムペット栄養センター(Waltham Pet Nutrition Centre)と合わせてペットフード市場に本格参入。この段階で「菓子+ペット」という二本柱の事業構造が確立され、世界展開の基盤が築かれた。この段階は1967年から1968年まで続いた。
2002年
高級化とカテゴリー買収 成長
2002年、フランスのロイヤルカナン(Royal Canin)を買収し、高級ペット栄養ラインを強化。2007年には米国のペット病院チェーンBanfieldを買収してペット医療サービスに参入。2008年には230億ドルでリグレー(Wm. Wrigley Jr. Company)を買収し、ガム事業を統合して「マース・リグレー(Mars Wrigley)」事業部を形成した。これらの一連の買収により、菓子とペットの両分野で世界トップ3にランクインし、年間売上高は300億ドルを突破した。この段階は2002年から2008年まで続いた。
2014年
大型買収と事業統合 PMF
2014年、P&Gのペットフード事業の大半(Iams、Eukanubaなど)を買収し、ペット部門の規模をさらに拡大。2020年には健康スナックブランドKINDを買収。2025年12月にはKellanova(プリングルズ、Pop-Tarts、Cheez-Itなどのブランド)を360億ドルで買収完了。これは食品業界史上最大級の買収の一つであり、欧米の規制当局の承認を得た。合併後のマースのスナック菓子年間売上高は360億ドル、全体では650億ドルを超え、従業員数は約14.7万人となった。2026年にはMarc Carena氏をグローバル・ペットフード社長に任命し、ペットフードのイノベーション計画を推進。Big Idea Venturesとの提携や、ADM等と協力した再生農業原料のサプライチェーン構築、メキシコのケレタロ工場への1.9億ドルの投資によるウェットフード増産などを行った。この段階は2014年から2025年まで続いた。

転換点

  • 1923年のMilky Wayの成功により、手作り工房から工業的量産体制へ転換したことが最大の転機。
  • 1932年にフォレストが父に追放され欧州で独立創業したことが、後の合併後の欧州事業の基盤となった。
  • 1967年の父子による合併が、欧米市場を統合しグローバル展開の基礎を築いた。
  • 1968年のKal Kan買収によるペットフード市場への参入が、第二の成長曲線を描いた。
  • 2008年のリグレー買収によりガム部門を補完し、菓子分野でハーシー(Hershey)を凌駕した。
  • 2025年のKellanova買収完了により、塩味スナック市場に参入し、スナック業界の覇者となった。

失敗とつまずき

  • 1911年のフランクの初創業は製品が売れず、1920年に倒産・清算を余儀なくされた。
  • 1932年にフォレストが経営理念の不一致で家業を追われ、父子関係が長年断絶した。
  • 2016年、マースのペットフードが特定のペットの疾病に関連しているとの疑いが報じられ、ブランドが一時的に世論の圧力を受けた。
  • 2020年の新型コロナウイルス流行による世界的なサプライチェーンの寸断で、チョコレート工場の減産やカカオ調達コストの高騰が発生し、利益率が圧迫された。

关键成功要素

  • 非上場かつ5代続く家族経営により、四半期決算に縛られず、10年単位の視点で買収や研究開発に投資できる。
  • ブランド買収主導:Kal Kan、ロイヤルカナン、リグレー、Kellanovaなど、十数年ごとに戦略的買収を行い、新カテゴリーを開拓し続けている。
  • サプライチェーンの垂直統合:自社構築やADM、Riceland Foods等との提携により、原料栽培から最終小売までを管理し、ESG対応として再生農業を推進。
  • 二本柱の相乗効果:菓子、ペットフード、ペット医療サービスが相互に補完し合い、ペット事業の急成長が菓子市場の成熟を補っている。
  • グローバルな工場配置:中国、メキシコ、欧州などで工場を増設。2026年のケレタロ工場への1.9億ドルの投資のように、市場に近い場所で物流コストを削減している。

教訓

  • 家族企業が永続するためには、世代間の権力継承を適切に行う必要があり、フランクと息子の対立と和解は典型的な教訓である。
  • 買収は単なる足し算ではなく、中核能力を軸にしたカテゴリー拡張であるべき。マースの買収は常に食品サプライチェーンにおける発言力を強化している。
  • 伝統的な菓子市場の停滞に対し、ペットフードのような高成長分野へ適時に参入することがグループ全体の成長維持に不可欠である。
  • 非上場であることは保守的であることと同義ではなく、むしろ経営陣が大胆な投資を行うことを可能にする。Kellanovaへの360億ドルの買収がその証明である。
  • サプライチェーンの強靭さは食品会社の生命線であり、再生農業や現地工場への継続的な投資が特定地域のリスクを低減させる。

主要データ

  • 年营收:650億ドル超(2026年、Kellanova連結後)(会社公表値、2026年時点、第三者による独立検証未実施)
  • 休闲食品年收入:360億ドル(Kellanova合併後)(会社公表値、2026年時点、第三者による独立検証未実施)
  • 宠物食品业务收入:300億ドル超(2026年)(会社公表値、2026年時点、第三者による独立検証未実施)
  • 员工数:約147,388人(2026年)(会社公表値、2026年時点、第三者による独立検証未実施)
  • 家族财富:1290億ドル(Forbes 2026)(会社公表値、2026年時点、第三者による独立検証未実施)
  • Kellanova收购额:360億ドル(2025年)(会社公表値、2026年時点、第三者による独立検証未実施)
  • Querétaro工厂投资:1.9億ドル(2026年)(会社公表値、2026年時点、第三者による独立検証未実施)

競合・同業

菓子、スナック、ペットフード分野における主な競合は、ペットフードブランド「Purina」のシェアがマースに近いネスレ(Nestlé)、シリアル・スナック事業(Lay'sなど)を展開するペプシコ(PepsiCo)、ビスケット・チョコレート分野で攻勢をかけるモンデリーズ・インターナショナル(Mondelēz)、そして米国市場で競合するハーシー(Hershey)である。ペットフードの細分化市場では、ネスレPurinaやゼネラル・ミルズ(General Mills)傘下のBlue Buffaloも強力なライバルである。マースは非上場という利点を活かし、長期的な低価格戦略や迅速な買収を行う一方、上場企業は利益変動の制約を受けるため、マースの積極的な拡大ペースを模倣することは困難である。